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ビルですか?いえセレブ団地です―市街地住宅の魅力とは

団地住まい予備軍のあなたへ。 Vol.3

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ビルですか?いえセレブ団地です―市街地住宅の魅力とは

「団地」の価値を見直し蘇らせる再生プロジェクトが、全国で始まっています。「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞きます。”団地家”の吉永健一さん、今回は、若い人にも人気があるという「セレブ団地」、市街地住宅の魅力をたっぷり語ってくれました。

text & photo : Kenichi Yoshinaga

団地というと中心エリアから離れた郊外にあるイメージがあります。しかし実は中心エリアにも団地が建っていることは意外と知られていません。団地に住みたいけど賑やかな街にも住みたいしなぁ、帰りが遅いから仕事場から歩いて帰れるくらいのところがいいなぁと思っている方におすすめな団地、それが市街地住宅です。

え?これビルでしょ?

まずは実例を一軒紹介しましょう。

え?これビルでしょ?と思われるかも知れませんが、実はこの建物1階から4階は象印マホービン本社で5階より上はUR賃貸住宅となっているのです。普通のビルに見えて実は上の階は住宅という集合住宅、実は結構あるのです。パッと見はわかりにくいですが、よくよく見るとちょっと上の方が雰囲気が違っていたりします。

天満橋北市街地住宅も、外観を観察すると4階と5階の間で切り替わっていることがわかります。

象印マホービン本社と住宅部分で窓が少し異なる

上部の象印マホービン本社と住宅部分で窓が少し異なる

ビルっぽい団地はなぜ生まれた?

なぜ、ビルのような団地が建てられたのでしょう。

高度成長期には郊外の団地を建てることと平行して、都市の中心部にも集合住宅を建てようとしていました。しかし中心エリアは土地の価格が高いのでたくさん建てるのはきびしい。そこで地主から土地を借りて団地を建てた訳ですが、そのときに土地所有者関係のテナントや自社ビルも一緒に収めたため、一見ビルのように見えるわけです。

また、洗濯物を外にひらひらさせていては都市景観上よろしくない、ということでバルコニーは作られませんでした。そのため住宅っぽくないつるんとした外観となり、ビルっぽさを強調しています。

【20西谷町】西谷町アパート:バルコニーがなくビルっぽい外観(UR都市機構  西谷町アパート )

バルコニーがなくビルっぽい外観(UR都市機構  西谷町アパート )

”高級タワーマンション”だった西長堀アパート

関西でもっとも有名な市街地住宅は西長堀アパートです。
司馬遼太郎、野村克也、森光子など建設当時のセレブが入居していたこの団地は今で言うところの高級タワーマンションです。完成当時の家賃は当時の大卒初任給並みだったのだとか。 そんなセレブ団地も今では安ければ5万円以下、高くても10万円未満の手頃な家賃で住むことができます。JRや地下鉄駅に近い団地も多く中心エリアで賃貸住宅を探している人はぜひ注目してほしい物件です。

かつてマンモスアパートと呼ばれていた西長堀アパート。完成当時は周辺で最も高い建物だった。

かつてマンモスアパートと呼ばれていた西長堀アパート。完成当時は周辺で最も高い建物だった。(UR都市機構 西長堀アパート )

収納と棚が作りつけられているので家具を買わなくてもすぐ住むことができる。

収納と棚が作りつけられているので家具を買わなくてもすぐ住むことができる。

露出ダクト好きにはたまらないキッチン

露出ダクト好きにはたまらないキッチン

湯船が無い代わりにシャワーが充実(他に浴槽のある部屋も有)

湯船が無い代わりにシャワーが充実(他に浴槽のある部屋も有)

市街地住宅の4つのよいところ

立地以外にも市街地住宅のよいところはあります。郊外の団地のような緑はありませんがとても良い住環境が整えられています。

その1:サンルームがある

下にお店や会社が入るのに上で洗濯物ヒラヒラというのはいかがなものかということで、バルコニーはつけられませんでしたが、そのかわりにサンルームが設けられました。観光ホテルの客室で、ソファを置いてある窓際の空間のようなイメージです。雨の日でも干しっぱなしにできるという点では、昼間留守がちな人にはバルコニーよりも使い勝手が良いかもしれません。

障子を開けると縁側…ではなくサンルーム

障子を開けると縁側…ではなくサンルーム

サンルームからは京都タワーが眺められる

サンルームからは京都タワーが眺められる

その2:日当たりがいい

都心の安いマンションというと日当たりが悪く暗い部屋が少なくありませんが、市街地住宅はさすが団地だけあって日当たりは抜群です。キッチンに窓があるお部屋もあり。

キッチンにも窓有

キッチンにも窓有

その3:屋上に出られる

郊外の団地のように敷地内に公園を設けることは難しい事でした。そこで屋上に公園をつくりました。かつてはブランコやジャングルジムなど遊具が置かれていたり、自主的に住民がビアガーデンにしていた団地もあったのだとか。現在は積極的に使われていませんが気分転換にふらりと屋上にのぼれるのはよさそうです。

東中寺アパート屋上。バルコニーがないので屋上に共同物干し場が設けられた。(UR都市機構  東中寺アパート )

東中寺アパート屋上。バルコニーがないので屋上に共同物干し場が設けられた。(UR都市機構  東中寺アパート

在りし日の里中アパート屋上。かつては滑り台とブランコがあった。

在りし日の里中アパート屋上。かつては滑り台とブランコがあった。(UR都市機構  里中アパート) 

その4:エベレーターが付いている

6階建て以上の場合はエレベーターがついています。 古い団地というと階段で上らないといけないイメージがありますが市街地住宅には建設当初からエレベーターがついていました。さすがセレブ団地です。

北堀江市街地住宅2DKのお部屋。ここにもサンルームがある。(UR都市機構  北堀江市街地住宅 )

北堀江市街地住宅2DKのお部屋。ここにもサンルームがある。(UR都市機構  北堀江市街地住宅

玄関、キッチンに窓有

玄関、キッチンに窓有

レトロなドアノブも一部健在

レトロなドアノブも一部健在

レトロな照明が現役で残っている

レトロな照明が現役で残っている

夕涼みにはもってこいのベンチ有

夕涼みにはもってこいのベンチ有

人のつながりがあるよさ

前回話をうかがったけんちんさんが最初に住んだ団地も市街地住宅(北堀江団地)でした。実際住んでみて感じた住み心地のよさは前回紹介したとおりですが、もう一つ民間マンションではなかなか感じられないよさがあります。それは人のつながりがあるということ。隣のおばあちゃんにあいさつをしていたら仲良くなって夕ご飯を作ってくれるようになり、病気で寝込んでたら心配して訪ねてきてくれた、という住民もいたのだとか。

けんちんさんによれば多くの知り合いに団地を勧めてきたなかで若い人にもっとも人気があったのが市街地住宅なのだそうです。都市居住を希望する人にとって便利で明るくて家賃がリーズナブルな市街地住宅はベストチョイスなのです。

吉永健一

吉永健一

団地に取り憑かれた建築家。
団地のリノベーション設計とともに団地専門の不動産屋「団地不動産」としてUR賃貸住宅のあっせん、分譲団地の仲介を行う。全国団地愛好家集団「プロジェクトD」メンバーとして団地の魅力を世に伝えるイベント企画出演、記事執筆もこなす。

>goodroomで大阪の「団地」の賃貸を探す
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