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「手仕事の人」Vol.2

部屋を彩る

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「手仕事の人」Vol.2

暮らしの何気ない風景にある家具や道具を、丁寧に作る職人がいます。使いやすいように、壊れないように、飽きがこないように。そう願いながらモノを作る。そんな手仕事の人を訪ねて、日々を楽しむきっかけを探したいと思います。
(text : Risa Otake / photo : Shungo Takeda)

Vol.2 壁紙職人

WALLS 中田健一さん

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「壁を彩る仕掛け人」

「手仕事の人」の第2回目は、輸入壁紙職人・中田健一さん(41)。輸入壁紙は、国産のもとは違い、素材や柄のバリエーションが広く、知識と熟練の技を要する。そんな難しいと言われる輸入壁紙をいとも簡単に操り、壁を彩る中田さんの事務所へ向かった。
            
阪急の十三駅。下町感溢れるこの街で、グーグルマップを頼りに行くと、恐らくここだろうというレトロなビル。ええっと、どこが入り口だろう。電話をしてみると、「二階に上がって来てください」とのこと。恐る恐る上がってみると、突き当りの扉が開く。そこには、シャツをぱりっと着こなした中田さんが手招きをしていた。「どうぞ、こちらへ」

中に入ると、奥様とともにお出迎えしてくれた。事務所の中は、打ちっ放しのコンクリートの天井や壁に、カラフルな輸入壁紙。さらに、床や脚立の踏み台まで、カラフルな壁紙で彩られていた。

いただいたお茶で一息つくと、早速、私は中田さんが職人の道に入ったきっかけを聞いてみた。

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15歳で職人の道へ。

「実は僕、訳あって高校を中退したんです。そこで何か仕事をしようと思っていたところ、父の知り合いに壁紙職人の親方がいるというので紹介してもらいました。最初は壁紙職人と言われ、ピンときませんでしたが、実際に会って、壁紙を貼っている親方の姿を見ていると、みるみるうちに壁紙がつながり、境目が一切わからないほど、美しく貼られていくんです。この人ほんま、マジシャンちゃうかなと思いました。とにかく、カッコいいんですよ」

そう笑顔で語る中田さんの横顔には、ヤンチャな面影がちらり。そうして親方の職人技に魅せられて、迷うことなく壁紙職人の道に入ったのだ。

「親方は、主に芦屋の高級住宅街で有名な六麓荘で仕事をしていたんです。難しい材料や難しい柄の壁紙をたくさん貼ったりして、めちゃくちゃ腕がよかった。そんな親方について仕事をさせてもらい、たくさん経験させてもらいましたね」

5年たったら独立したらええんちゃうと親方に言われ、独立を目標に6年修行した。そして、21歳のときに独立。

「でも、最初は、21歳なのでなかなか相手にされず仕事もこなかった。そこで、親方の下請けという感じで、ただただ量産品の壁紙を貼るしかなくて。全然、面白くなかった……」

当時の悔しい思いがひしひしと伝わってくる。きっと、親方のように、お客さんに求められ、職人らしい仕事をしたい気持ちが強かったのだろう。

思い切って「何かに特化しよう」と決めた。そこで、選んだのが、かつて自身も手がけ、馴染みのある輸入壁紙。さらに、自分らしさ、新しさを壁紙業界に作る挑戦でもあった。

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仕事の正装は“白シャツ”

職人さんといえば、”ドロドロになって汗だくになってやっている”。
それもある意味ではかっこいいけれど、中田さんは施工現場に、職人とは真反対のイメージであるシャツで行く。しかも、真っ白の。

「綺麗に仕事しようと思ったら、どこもかしこも汚さないようにする。腕のいい職人さんは体が汚れないと言うように、白いシャツを着ていたら汚さない動きになるんです。そういう動きは誰が見ても丁寧に見える」

内装の一部である壁紙を、お家に上がらせてもらって施工するため、お客さんが安心して任せてもらえるよう徹底しているのだ。

「養生も、床に傷がつかないように徹底してやっています。おおさげなくらいやったほうが、お客さんは安心するので。服装もそうやと思っています。変な話、スーツ着て行ったりとかね(笑)。ある意味、面白いと思います。エルメスの壁紙を貼るときなんか、蝶ネクタイしていったりなど、あってもいいかなと思っています」

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大切なことは“魅せ方”

「一番大切にしているのは、細かい技術もそうなんですけど、魅せ方ですかね。一面だけ貼ることが多いんですけど、そこが主役じゃないですか。その主役のなかでも、どの柄を主役にもっていくかを常に考えていますね」

さらに、大切にしていることが、もうひとつ。それはお客さんとのコミュニケーションだ。特に輸入壁紙は、壁紙を選んでもらってから届くだけでも2,3ヶ月はかかる。
それだけ、お客さんとのコミュニケーションも密になってくるのだ。

「施工って技術だけではない。お客さんあってのものなんで、壁紙だけあっても駄目だし、職人だけおってもあかんし。仕上がりだけでもあかん。何ヶ月も一緒に待って、きちんとした格好で綺麗に施工すると、こちらも驚くくらい喜んでくれるんです。そんなとき、輸入壁紙の仕事をしていて良かったなあと思います」

また、中田さんは、若手育成や壁紙を使ったワークショップを定期的に開いている。これからもこの業界を魅了していく中田さんの様々な“壁紙の魅せ方”にも目が離せない。

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輸入壁紙施工・工事専門の「WALLS(ウォールズ)」
http://walls.jp/

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