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あのころ夢見た”空中都市”「坂出人工土地」を訪ねる

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団地、アパート、ハイツ、マンション。グッドルームで紹介しているいろいろなお部屋、その外観も含めて「お、これはなかなか面白いな!」ていうもの、時々めぐり合います。そう、集合住宅って、おもしろい!
世界のおもしろい建築をたくさん巡っているタケさんに、おもしろい集合住宅を紹介していただくコラム。
第2回は、「坂出人工土地」。まず名前がかっこよくてしびれますが、「人工土地」にこめられた想いとはなんだったのでしょうか。ご覧ください。
(編集部)

あのころ夢見た”空中都市”「坂出人工土地」を訪ねる

丸ごとかさ上げされた「第2の土地」

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コラム「集合住宅っておもしろい」の第2回、まずは1枚目の写真をご覧ください。まあ、ごく普通の団地に見えますよね。ところがこの“土地”、本当の地上から数メートル、おおむね2~3階建ての屋上の高さに存在しています。樹木や花壇があって車も停まっているのに一体どういうことかというと、実は大きな“下駄”のような構造物の上に団地が丸ごと載っているのです。団地の名前は京町団地、構造物も含めた正式名称は清浜・亀島地区住宅改良事業といいますが、実際は別の名前で呼ばれています。その名は坂出人工土地─

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瀬戸内海に面した香川県坂出市、その駅前から北に数分ほど歩くと目指す坂出人工土地が見えてきます。道路に面した1~3階は店舗とその経営者の住宅、背後の部分は駐車場になっていて、その上に公営住宅が載るという複合施設です。もっとも、1階に店舗や駐車場、上の階に住宅という組み合わせ自体は、どこにでも見られるもので別に珍しくありません。それはこの施設の第1期部分が竣工した1968(昭和43)年当時も同じです。坂出人工土地が画期的だったのは、高さ2~3階建てに相当する巨大なプラットホーム状構造物で敷地全体をかさ上げし、その上に団地を築いた点で、「人工土地」とはこのプラットホームを指します。これは単なる屋上庭園を超えた「第2の土地」というべきものです。

1階は路地裏のような商店街に

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道路側の姿では人工土地の構造がわかりにくいのですが、駐車場に露出した鉄筋コンクリートの太い柱や梁を見ると、人工土地というSFチックな名前の意味が実感できます。

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もっとも、地方の商店街の例に漏れず、ここも道路に面した店舗でさえシャッターが下りたままのところが目に付きます。内部の店舗は飲み屋が多く、いちおうトップライトはあるものの通路は薄暗くて、地下街や路地裏みたいな雰囲気です。

屋根の上に並び建つ団地

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では、階段で「第2の土地」に上がってみましょう。ここは、薄暗い下部とは対照的に日差しが降り注ぐ空間が拡がっています。写真は割愛しますが車が通行できるスロープもあって、だから1枚目の写真に車が写っているわけです。建物は基本的に箱形なので、ここが人工土地の上ということを除けば、普通の団地とさほど変わりませんが、庇や階段室の形に特徴を付け、棟ごとに向きを変えたり位置を微妙にズラしたりなど、画一的になりがちな団地の風景から脱しようとする工夫も見られます。ただ、完成直後は未来的だったであろう団地も、花壇には草が無造作に生い茂り、藤棚や遊具は錆び付いていて、どこか色褪せた印象は否めません。

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団地内の通路。並んだ筒状の物体は下部通路(5枚目の写真)のトップライト。

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人工土地の北端。この下はなんと市民ホールで、屋根の傾斜に沿って平屋建ての住戸が階段状に並んでいます。

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市民ホールの側面。屋上に住戸の壁が少しだけ見えます。

空中都市的アイディアとしての「人工土地」構想

ところで、このような大げさともいえる構造物が建設された背景を少し説明しておきましょう。坂出人工土地は4期に分けて建てられ、最初の第1期部分が完成したのは前述の通り1968(昭和43)年のこと。現在の大都市では市街地再開発事業が次々と行われていますが、法律が未整備だった昔は権利関係の調整が難しく、なかなか進められませんでした。このままでは老朽化した建物が残る一方で場当たり的な開発が行われ、都市が荒廃してしまう― この状況を憂えた当時の建築家達は、様々な未来都市像を提案します。それらには、再開発の妨げとなっている土地の私有制度をテクノロジーで一気に飛び越えようとする狙いから、巨大構造物による空中都市的なアイディアが多く見られました。大高正人氏という建築家が提案した人工土地構想もそのひとつです。

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しかし結局、人工土地が実現したのは坂出市だけで、空中都市はタワーマンションという形で実現することになります。最初の完成から約半世紀が過ぎた坂出人工土地は、住民の生活空間としてすっかり馴染みつつ、空き家や老朽化も進み、まるで未来都市の遺跡といった雰囲気が漂います。ですが、この早すぎた未来都市が朽ち果てるのはあまりにも惜しい気がします。

新聞報道によると、建築の再生を得意とする建築家の下で坂出人工土地の再生プロジェクトが進んでいるそうです。坂出人工土地が輝きを取り戻したとき、人が住みやすい集合住宅とはどうあるべきか、改めて私達に問いかけてくることでしょう。

名称:坂出人工土地
住所:香川県坂出市京町
注意:団地は市営住宅なので部外者も立ち入りできますが、見学の際は住民のプライバシーに配慮してください。

写真と文・タケ

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