器のお店で京都初の個展。塩川いづみ個展「ダンス」(三条・nowaki)
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ふだんの通学・通勤路じゃあんまり気にしてないけど、ちょっと見方を変えて眺めてみると、東京の街って、オモシロイ。
いろんなマニアにお話をうかがって、いろんな角度からいつもの街を眺める連載『Tokyo「色」眼鏡』がはじまります。
シリーズ1は「水の都」と言われた東京を、「川から見る」。「小さな舟」に乗って、いつもと違う視点を楽しんでみました。
(text : Miha Tamura / photo : Kayoko Aoki※トップ画像)
前回紹介した舟、「みづは」。じつはこの舟「みづは」のオーナーであり、クルーズガイドを務めるのは、佐藤美穂さん。舟を運転してくださるご主人の勉さんとふたりで運営している。そして、おふたりともじつは元々ふつうのサラリーマン。
お話を伺ってみたら、そこには美穂さんの川への情熱がつまっていた。
ご主人の転勤でアメリカに住んでいたとき、「外から」見ることで日本文化の良さに初めて気づき、感動したという美穂さん。日本の文化を伝える仕事をライフワークにしたいと一念発起して始められたのが、このクルーズビジネスなのだ。
でも、なんで、舟だったんですか?
美穂さん
「時代劇によく出てきますよね。小さな屋形船の中で、悪い人たちが、おぬしも悪よのう、なんて密談したり、カップルがこっそり逢引したりするシーン。そういうのが、すごく日本っぽくていいなぁと思って惹かれていて。」
美穂さんの憧れが元になっているからか、「みづは」はとっても「密談」向きなサイズ。江戸の職人さんが作ったすだれや、天井の薄型行灯など、随所に「和の心」が感じられるアクセントも、美穂さんらしい。この船、じつは特注品なのだそうだ。
漁船をそのまま転用して釣り船や貸切クルーズを運航しているのはたまに見るけれど、え、中古でもなく、できてるものを買うのでもなく、いちから作っちゃうって、大変じゃないんですか!?
美穂さん
「屋根があっても東京の低い橋をくぐることのできる高さで、それに、ゆったりした幅がありながらも長さはコンパクトな、ちょうどよいサイズの舟ってなかなかなくて、納得いくものにするには新しく作るしかなかったんです。人脈をたどって、まずボートデザイナーさんに頼み込んで設計してもらって、そこから造船所を探すんだけど、時期がちょうど東北の震災復興のときでなかなか空きがなくて……西伊豆の造船所にやっと空きを見つけて、作ってもらうことができました」
ほら、やっぱり大変だった。
船を作るだけでなく、クルーズ業界に「修業をさせてくれ」と押しかけていったり、ちょうど会社をやめようかというタイミングだったご主人に、船舶免許をとってもらったり。ここまで漕ぎつけるためのストーリーはもう、「冒険談」と言っていいレベル。
私もちょっとした「水辺好き」を自認していたが、淡々と語る美穂さんの情熱、ちょっとただものではなかった。
美穂さん
「クルーズ業界の先輩には、旅行会社のツアー客をとりこめないようなこんな小さな船は儲からないよ、と言われたんだけど、私自身が大人数の団体ツアーって好きじゃなくて。少ない人数でゆったり、のんびりと水辺を楽しんでもらえる船にしたかったんです」
私も、分厚い窓を通してしか水辺が見えない大型の水上バスや、どんちゃんさわぎの屋形舟しか川に出る手段がなかったら、こんなふうに「ちょっと船に乗って川を探検してみよう」なんていう気持ちにはならなかっただろう。美穂さん、素敵な船を作ってくれてありがとう。
協力:舟遊びみづは
土日祝日を中心に乗合クルーズ運航。
定番の「東京ランドマーク舟遊び」60分、「神田川舟遊び」80分、「夕暮れ夜景舟遊び」60分(5~10月)に加え、日本橋の老舗とのコラボや飲食イベント、花見・夕涼み・月見など季節ごとの多彩な特別便も開催。いずれも1名から参加可。貸切は常時対応。(要予約)
アクセス:日本橋船着場・勝どき朝潮船着場・吾妻橋船着場(便によって異なるが、主に日本橋発着)
予約URL:http://www.funaasobi-mizuha.jp/
田村美葉
田村美葉
1984年生まれ、石川県金沢市出身。上京してからというもの偏愛道に目覚め、エスカレーターの写真を撮りためたり、高架橋脚の下を歩いてまわったり、小さな舟に乗って川をうろうろしたりしています。
東京エスカレーター/高架橋脚ファンクラブ