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部屋を自分に最適化する。男性エンジニアのひとり暮らし

TOMOS people Vol.8

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部屋を自分に最適化する。男性エンジニアのひとり暮らし

写真家・ライターの大山顕さんに、ちょっとおもしろい撮り方で、無垢床リノベーション「TOMOS」のお部屋と住んでいる人の「平面図」を撮ってもらうシリーズ。
今回は、エンジニアの寺田さんのお部屋に訪問。お休みの日にお伺いしたにもかかわらずピシっとタイ着用でばっちりキメて出迎えてくださった寺田さん。お部屋のあらゆる場所のあらゆるものが、最も使いやすい場所にぴしっと収まっています。

text & photo : Ken OHYAMA

今までと違う何かを感じる

「デザイナーズじゃないのがよかったんです」と寺田さんがおっしゃったのを聞いて、なるほどと思った。寺田さんとは、今回おじゃましたこのかっこいい部屋の主である。

これまで訪問した部屋すべてがかっこいいのだが、寺田さんの部屋には今までと違う何かを感じた。独身男性のお住まいという点ではOさんと同じだが、かの「自分の城」とは異なる雰囲気だ。なんだろうこれ。というか、ぼくが感じたこの雰囲気がまったく写真で伝わらないのがもどかしい。

キッチンからリビングを見渡したところ。なんてきちんと整頓されたすてきな部屋! 自分の部屋と比べて、毎回反省する(奥のテレビ手前に唯一整頓されてない部分が見えますが、それはぼくのカバンとコートです。どけろよ、って話です)

キッチンからリビングを見渡したところ。なんてきちんと整頓されたすてきな部屋! 自分の部屋と比べて、毎回反省する(奥のテレビ手前に唯一整頓されてない部分が見えますが、それはぼくのカバンとコートです。どけろよ、って話です)

上の平面図写真には含まれていませんが(右のドアの先にあたる)、寝室にはデスクなどもあってそこもこのようにスタイリッシュ!

上の平面図写真には含まれていませんが(右のドアの先にあたる)、寝室にはデスクなどもあってそこもこのようにスタイリッシュ!

デスクの上にはペーパーナイフと万年筆。かっこいい。

デスクの上にはペーパーナイフと万年筆。かっこいい。

誤解されるような表現になっちゃうけど、寺田さんの部屋はいわゆる「居心地の良い部屋」ではなかった。これはくさしているのではない。それはもうすごくすてきな部屋だった。しかし「ここはぼくの部屋じゃない」と強烈に感じたのだ。もちろんOさん含めこれまでおじゃましたお宅も「ぼくの部屋」じゃないんだけど、こういう感じ方をしたことはなかった。

「居心地が良い」という表現は他人の部屋をほめる言葉として多用されるが、これはよく考えてみるとすこし変だ。なんとなれば個人の部屋とはそこに住む人のためのものであって、居心地の良さは人によって違うはずだからだ。たぶん寺田さんの部屋は寺田さんに最適化されきっているということなのだと思う。

「居心地の良さ/悪さ」の正体が何なのかは分からないが、それが「部屋のすてきさ」とは関係がないことが分かったのが今回の発見である。あきらかに寺田さんの部屋はすてきだ。きちんとしていてとても感じがいい。憧れる。こんなにすてきなのに「居心地が良くない」(繰り返して申し上げますがこれは悪口じゃないですよ!)のはすごいと思う。乱雑でしっちゃかめっちゃかな部屋が他人にとって居心地が良くないのは当たり前だが。そう、それはぼくの部屋のことだ。しかしぼくの名誉のために言っておくが、ぼくにとっては居心地がよいのである。って、べつにこれ名誉のためになってないか。

今回はなんかいろいろ考えさせられる

リビングには本棚があって…

リビングには本棚があって…

料理の本が。「専門料理」って雑誌あるのか! すごい。

料理の本が。「専門料理」って雑誌あるのか! すごい。

キッチンのカーゴにはきちんと茶葉がおさめられていた。

キッチンのカーゴにはきちんと茶葉がおさめられていた。

「料理は好きで、よくします」そうなんだろうなー! と納得するスパイスの数々。そしてやっぱりこの整頓ぶりがすばらしい。

「料理は好きで、よくします」そうなんだろうなー! と納得するスパイスの数々。そしてやっぱりこの整頓ぶりがすばらしい。

お仕事はエンジニアだという寺田さん。本棚には料理の本、キッチンには各種スパイスがとりそろえられていて、傍らにはワインセラー。めずらしいビールの瓶も飾られている。お友達とか呼んで食事したりするんですか? との問いに「そういうことはほとんどないですね」とのこと。なるほど、と思った。つまりこの部屋は完全に寺田さんのものなのだ。お客さんを招くことの多い部屋づくりには他人の視線が盛り込まれ、そのことが住んでいる人に影響を及ぼしたりするが、ここではあくまで寺田さんが「主」で部屋は「従」なのだな。どちらが良いとか悪いとかではなく、人と部屋の関係にはいろいろなパターンがあるということだ。うむ、今回はなんかいろいろ考えさせられる。

あとぼくが「おお!」って思ったのは本棚の上にあったこれ。アーティスト・かわさきみなみさんの作品だ!「よく行く根津のギャラリーで見て気に入って購入しました」とのこと。

あとぼくが「おお!」って思ったのは本棚の上にあったこれ。アーティスト・かわさきみなみさんの作品だ!「よく行く根津のギャラリーで見て気に入って購入しました」とのこと。

こちらもそのギャラリーで購入されたという杯。猫がお酒に浸かるという寸法。かわいい。

こちらもそのギャラリーで購入されたという杯。猫がお酒に浸かるという寸法。かわいい。

キッチンの窓のカーテンはよく見たらてぬぐい! いいなこれ。

キッチンの窓のカーテンはよく見たらてぬぐい! いいなこれ。

そしてその上にはめずらしいビールの瓶が。

そしてその上にはめずらしいビールの瓶が。

ここで思い出したのは昔の間取りには「応接間」があったよなー、ということ。どんなに狭い団地でもお客さんを呼ぶ想定の部屋があった。付随してステレオや革張りのソファなどの「応接セット」というものもあった。飾りの百科事典セットとかね。実際ほんとうにお客さんが来ていたのかはなはだ疑問だけど。現代のお客さんを想定した部屋づくりが難しいのは、リビングがその場になってしまうということだと思う。同じ空間でプライベートと応接を両立しなければならない。

ちなみに、もっと昔だとそもそも家とプライベートという観念の関係自体が現代とは異なっている。夏目漱石の小説などを読むと、主が不在の部屋に上がり込んで帰りを待つ、という描写があったりする。ルイ14世の時代の王侯貴族たちのベッドルームに至っては、そこは謁見と政治の場だったそうだ。寝室がプライベートなものとして他人から見えない領域に引っ込むようになるのは17世紀から18世紀のあいだだという(多木浩二「眼の隠喩」より)。うむ、ほんとうに今回はなんかいろいろ考えさせられるぞ。というか、なんか理屈っぽいかな?

部屋は靴だ!

冒頭の「デザイナーズじゃないのがよかったんです」という言葉は、どうしてTOMOSの部屋を選んだのか、という質問に対する寺田さんの答えだ。「自分の世界観とぶつからないですから」と。ふたたびなるほど、と深く頷いた次第だ。「世界観」とはおっしゃるが、とはいえ衒ったところはなく、ふつうにすてきな部屋なのがほんとうにすごい、と改めて思った。

寝室のクローゼット(ちなみに元押し入れのリノベ)も見せてもらったら、ここもすてきに整頓されていて感銘。上に見えるのは帽子。おしゃれだなー。

寝室のクローゼット(ちなみに元押し入れのリノベ)も見せてもらったら、ここもすてきに整頓されていて感銘。上に見えるのは帽子。おしゃれだなー。

さて、この連載では毎回ある3つの写真を撮っている。ひとつは冒頭の「平面図写真」、もうひとつは最後の「寝っ転がってポートレイト」、そして「集めているものを並べて撮る」だ。今回寺田さんに並べてもらったのは、靴。ポートレイトを見てもらったらわかるが、寺田さんはかなりの洒落者。靴もかっこいいものばかり。そしてやはりきちんとシューキーパーが入れられている。すごい。見習いたい。

恒例の「持っているものを並べてもらって撮る」。今回並べてもらったのは靴。すげーかっこいい靴ばかりでびっくりした。

恒例の「持っているものを並べてもらって撮る」。今回並べてもらったのは靴。すげー